帰国。
彼のモーニングコールで起床。
空港に向かうタクシーの中でバッグをホテルのロビーに
忘れたことに気がついた。
横に座ってた彼に言ったら、運転手さんに事情説明してくれて
ホテルにも電話してくれた。
空港のすぐ近くまできてたけど、みんなでホテルへ。
彼、家族にお土産買うっていってたのに、悪いことしたな。
遅くなったせいもあって空港は大混雑。
彼はいつも非常口近くに移動しちゃうけど、
先にチェックインした人も席空いてないよって言ってた。
変更がないなら近くの席に座れるかもなぁ…
私が不確実な期待を抱きつつボーっとしてる間に
一緒にいた人が先にカウンターに呼ばれた。
少し間を置いて、彼の質問。”隣同士だったら、一緒に座る?”
家族にお土産を買う彼の後を、所在無くついていった。
一度は断ったけど、ほとんどずっと彼が荷物持ってくれてた。
そのまま彼と一緒に飛行機に乗って、本当に隣同士に座った。
横向くと、彼もこっちを向く。
悔しいけど、私が彼のほうを向かないと、こっちを見ない。
寝不足でボロボロの肌、目の下に陣取ったクマ、
風邪でしゃがれた声が恨めしい。
最初は、普通の話をしてた。薬の話とか、料理の話とか。
タレントさんの話とか。
彼は神経質そうな子とか、じゃじゃ馬な女の子が好きだって。
痩せた子も好きって。私は痩せてるぞ?
”うちの部内だったら誰がいい?たくさん男いるでしょ。”
”選べないよ”
”誰かいい人いないの?”
日ごろ優しくしてもらってる主任さんの名前を出して
彼の話をしてみたり。でも、その後もう一度聞かれて。
前回聞かれたときも我慢したし、これ以上ごまかすのはみっともないな。
重ねて聞いた彼も悪いし、恋愛感情がなくても多分好きだから。
”私ね、あなたのこと、好きなんですよ”
彼、少し驚いてた。ここまでやってるなら、ポーズだろうね。
いろいろな人に信頼されて、人を惹きつける彼。
いつも楽しそうで、自分の思うままを、
人を傷つけないように口に出来る彼。
仕事も出来て、仲間もいて、臆することなく夢を口に出来る彼。
前向きで、真面目で、努力家で、悪意なんて見えなそうな彼。
彼になら、まかせておいても大丈夫だと思った。
彼への気持ちには、私の憧れとか、嫉妬とかも混じってる。
彼も、私のこと肌触りがいいって言ってた。
話がわかるから、楽をしないから、話を聞いてくれるから。
楽しそうな家庭なのに、どうして?
奥さんは彼の言うとおりにしてくれるけど、
わかろうとしてくれないって。
きっと、それは嘘。彼はそういうもんだってことを分かってるはず。
意見が違ったとき、好きにしていいよ、って言ってくれる人っていない。
ニュアンスにもよるけど。
彼は、彼女を縛るために結婚したって言ってた。
そして、今は彼女に縛られている、とも言った。
彼もそういうことを話すんだ。
飛行機を降りるまで、彼とずっと話してた。
9時間。緊張と、咳と、不器用さで話が途切れることも多かったけど
横を向くとすぐ傍に彼がいた。
からかうようにこちらを見る彼。この時が、ずっと続けばいいのに。
彼が、帰りどうするのって聞いたから、電車って答えた。
彼は、僕は空港から歩かなくてすむからバスで帰るよって言って、
ひとしきり帰途の説明をしてから君も試してみる?って言った。
今日は、ずっと、Noと言わなくていいようにしてる。
できれば、その意図を彼の口から聞きたい。
飛行機を降りて、バスに乗った。意外と空いてた。
広いので、別々に座るのかな、と思ってたら
彼が私を窓側に座らせて、横に座った。
”何か、聞きたいことある?”
今思えば、聞きたいことある。たくさん。知りたいもの。
奥さんのこと、ほんとはどう思ってるの。
どうして家族いるのにどうしても守りたいものなんてないって言うの。
私のことどう思ってるの。
こんなこと喋って、私これからどうすればいいの。
”知りたいと思う?”
”知りたい。でも、距離のとり方がわからない”
聞かないほうがいいと思う。
きっと、拒絶される。そうせざるを得ないでしょ。
喉が苦しかったし、車の騒音と緊張で
あまり良く聞こえなかったけど
彼は彼の答えをくれた。
”今の距離は、不満?”
隣に彼。
広くない座席のせいで体は触れ合ってて、
手を伸ばせば、届きそうな距離。
でも、この数時間で私は何も変えられてない。
きっと来週には、同じ距離に戻る。私が戻してしまう。
近づきたい。もっと。臆病な私が、ここに居られる許可が欲しい。
”遠いよ”
本当は、物理的にももっと近づきたい。
間違いだと思う。新人の女の子が、
そばにいる上司に惚れるって言うありがちなパターン。
でも、ありがちでも私はあなたを知りたい。
このまま、家に帰ってしまえば
次に会うときには元の距離に戻る、戻ってしまうのだとしても。
”彼氏は?”
”いるよ”
ここで嘘ついていつも後悔する。彼も知っててもおかしくない。
否定して、他の言葉も嘘だと思われくない。案の定、彼は名前も知ってた。
”彼氏のこと、俺といたらどうするの”
そんなこと、聞かれると思ってなかった。
そんな話を真面目に彼がすると思ってなかった。
本気でそんな話する日が来ると思ってなかった。
彼がそんなこと考えると露ほども思ってなかった。
恵まれた家に育って、誰が見ても文句のつけようのない家庭を持つ
彼の口からそんな物騒な思想が本気で出てくるとも思ってなかった。
彼にそんなところまで考えさせただけで、もう満足かもしれない。
”ほっておくよ。彼と別れてあなたを選んだらどうするの?”
”そうすると、君のこと遠ざけないとダメだろうね。踏み込めないよ”
”どこまでなら、近づいていい?”
”誤解が起きないくらい。仕事の上ではいいよ。
仕事の上でなら、一緒にいる時間も長いし、きっとこれからも
こういう風に出張するチャンスもあるだろうから一緒にいられるだろうね。
でも、プライベートでっていうのは難しいよ”
”困ってる?”
”嬉しいし、光栄だと思う。好きか嫌いかって言われたら、好きだしタイプだよ。
でも、ここで止まらないと俺も理性的でいられなくて止まらなくなる。
プライベートで付き合えるか確認するためにはお互い時間が必要だけど、俺たちにはそういう時間がないから。
俺は責任をとれないし、どうでもよければ
諦めて他の人探せよって言うのがほんとはね、正しい。
付き合うなら堂々としていたいし、あそこに観覧車あるけど、
ああいうとこで人ごみに混じって普通にデートもしたい。
君には厳しい言葉かもしれないけど…
君が望むなら、君のことを父親や兄のような立場で
支えていってもいい。でも、それは恋愛とは違う。
独立した個人で、信頼しあう関係になれればいいと思う。
いい女になって欲しいし、そうなるように俺が何かできるなら
できるだけのことはしてあげたい”
両想い、ですか。方言にしても、展開が意外すぎてくらくらする。
”他に聞きたいことは?”
プライベートで付き合えるようになる方法。
でも、その答えの一部は既に私も持っている。
余裕のなさをさらけ出して確認するより、聞かないほうがいい。
”いつか、何らかの理由で
離婚するようなことがあればそのときはわからない。
でも、俺はひとりの人としか付き合わないよ”
きっと、彼も私と同じ失敗をしたことがあるんだろう。
諦めない。彼が、私が諦めることを本気で望んでいないから。
彼のモーニングコールで起床。
空港に向かうタクシーの中でバッグをホテルのロビーに
忘れたことに気がついた。
横に座ってた彼に言ったら、運転手さんに事情説明してくれて
ホテルにも電話してくれた。
空港のすぐ近くまできてたけど、みんなでホテルへ。
彼、家族にお土産買うっていってたのに、悪いことしたな。
遅くなったせいもあって空港は大混雑。
彼はいつも非常口近くに移動しちゃうけど、
先にチェックインした人も席空いてないよって言ってた。
変更がないなら近くの席に座れるかもなぁ…
私が不確実な期待を抱きつつボーっとしてる間に
一緒にいた人が先にカウンターに呼ばれた。
少し間を置いて、彼の質問。”隣同士だったら、一緒に座る?”
家族にお土産を買う彼の後を、所在無くついていった。
一度は断ったけど、ほとんどずっと彼が荷物持ってくれてた。
そのまま彼と一緒に飛行機に乗って、本当に隣同士に座った。
横向くと、彼もこっちを向く。
悔しいけど、私が彼のほうを向かないと、こっちを見ない。
寝不足でボロボロの肌、目の下に陣取ったクマ、
風邪でしゃがれた声が恨めしい。
最初は、普通の話をしてた。薬の話とか、料理の話とか。
タレントさんの話とか。
彼は神経質そうな子とか、じゃじゃ馬な女の子が好きだって。
痩せた子も好きって。私は痩せてるぞ?
”うちの部内だったら誰がいい?たくさん男いるでしょ。”
”選べないよ”
”誰かいい人いないの?”
日ごろ優しくしてもらってる主任さんの名前を出して
彼の話をしてみたり。でも、その後もう一度聞かれて。
前回聞かれたときも我慢したし、これ以上ごまかすのはみっともないな。
重ねて聞いた彼も悪いし、恋愛感情がなくても多分好きだから。
”私ね、あなたのこと、好きなんですよ”
彼、少し驚いてた。ここまでやってるなら、ポーズだろうね。
いろいろな人に信頼されて、人を惹きつける彼。
いつも楽しそうで、自分の思うままを、
人を傷つけないように口に出来る彼。
仕事も出来て、仲間もいて、臆することなく夢を口に出来る彼。
前向きで、真面目で、努力家で、悪意なんて見えなそうな彼。
彼になら、まかせておいても大丈夫だと思った。
彼への気持ちには、私の憧れとか、嫉妬とかも混じってる。
彼も、私のこと肌触りがいいって言ってた。
話がわかるから、楽をしないから、話を聞いてくれるから。
楽しそうな家庭なのに、どうして?
奥さんは彼の言うとおりにしてくれるけど、
わかろうとしてくれないって。
きっと、それは嘘。彼はそういうもんだってことを分かってるはず。
意見が違ったとき、好きにしていいよ、って言ってくれる人っていない。
ニュアンスにもよるけど。
彼は、彼女を縛るために結婚したって言ってた。
そして、今は彼女に縛られている、とも言った。
彼もそういうことを話すんだ。
飛行機を降りるまで、彼とずっと話してた。
9時間。緊張と、咳と、不器用さで話が途切れることも多かったけど
横を向くとすぐ傍に彼がいた。
からかうようにこちらを見る彼。この時が、ずっと続けばいいのに。
彼が、帰りどうするのって聞いたから、電車って答えた。
彼は、僕は空港から歩かなくてすむからバスで帰るよって言って、
ひとしきり帰途の説明をしてから君も試してみる?って言った。
今日は、ずっと、Noと言わなくていいようにしてる。
できれば、その意図を彼の口から聞きたい。
飛行機を降りて、バスに乗った。意外と空いてた。
広いので、別々に座るのかな、と思ってたら
彼が私を窓側に座らせて、横に座った。
”何か、聞きたいことある?”
今思えば、聞きたいことある。たくさん。知りたいもの。
奥さんのこと、ほんとはどう思ってるの。
どうして家族いるのにどうしても守りたいものなんてないって言うの。
私のことどう思ってるの。
こんなこと喋って、私これからどうすればいいの。
”知りたいと思う?”
”知りたい。でも、距離のとり方がわからない”
聞かないほうがいいと思う。
きっと、拒絶される。そうせざるを得ないでしょ。
喉が苦しかったし、車の騒音と緊張で
あまり良く聞こえなかったけど
彼は彼の答えをくれた。
”今の距離は、不満?”
隣に彼。
広くない座席のせいで体は触れ合ってて、
手を伸ばせば、届きそうな距離。
でも、この数時間で私は何も変えられてない。
きっと来週には、同じ距離に戻る。私が戻してしまう。
近づきたい。もっと。臆病な私が、ここに居られる許可が欲しい。
”遠いよ”
本当は、物理的にももっと近づきたい。
間違いだと思う。新人の女の子が、
そばにいる上司に惚れるって言うありがちなパターン。
でも、ありがちでも私はあなたを知りたい。
このまま、家に帰ってしまえば
次に会うときには元の距離に戻る、戻ってしまうのだとしても。
”彼氏は?”
”いるよ”
ここで嘘ついていつも後悔する。彼も知っててもおかしくない。
否定して、他の言葉も嘘だと思われくない。案の定、彼は名前も知ってた。
”彼氏のこと、俺といたらどうするの”
そんなこと、聞かれると思ってなかった。
そんな話を真面目に彼がすると思ってなかった。
本気でそんな話する日が来ると思ってなかった。
彼がそんなこと考えると露ほども思ってなかった。
恵まれた家に育って、誰が見ても文句のつけようのない家庭を持つ
彼の口からそんな物騒な思想が本気で出てくるとも思ってなかった。
彼にそんなところまで考えさせただけで、もう満足かもしれない。
”ほっておくよ。彼と別れてあなたを選んだらどうするの?”
”そうすると、君のこと遠ざけないとダメだろうね。踏み込めないよ”
”どこまでなら、近づいていい?”
”誤解が起きないくらい。仕事の上ではいいよ。
仕事の上でなら、一緒にいる時間も長いし、きっとこれからも
こういう風に出張するチャンスもあるだろうから一緒にいられるだろうね。
でも、プライベートでっていうのは難しいよ”
”困ってる?”
”嬉しいし、光栄だと思う。好きか嫌いかって言われたら、好きだしタイプだよ。
でも、ここで止まらないと俺も理性的でいられなくて止まらなくなる。
プライベートで付き合えるか確認するためにはお互い時間が必要だけど、俺たちにはそういう時間がないから。
俺は責任をとれないし、どうでもよければ
諦めて他の人探せよって言うのがほんとはね、正しい。
付き合うなら堂々としていたいし、あそこに観覧車あるけど、
ああいうとこで人ごみに混じって普通にデートもしたい。
君には厳しい言葉かもしれないけど…
君が望むなら、君のことを父親や兄のような立場で
支えていってもいい。でも、それは恋愛とは違う。
独立した個人で、信頼しあう関係になれればいいと思う。
いい女になって欲しいし、そうなるように俺が何かできるなら
できるだけのことはしてあげたい”
両想い、ですか。方言にしても、展開が意外すぎてくらくらする。
”他に聞きたいことは?”
プライベートで付き合えるようになる方法。
でも、その答えの一部は既に私も持っている。
余裕のなさをさらけ出して確認するより、聞かないほうがいい。
”いつか、何らかの理由で
離婚するようなことがあればそのときはわからない。
でも、俺はひとりの人としか付き合わないよ”
きっと、彼も私と同じ失敗をしたことがあるんだろう。
諦めない。彼が、私が諦めることを本気で望んでいないから。
私の部屋で飲んだ。
彼も、もちろん来た。最初に来てくれたのが、彼。
隣に座れなかったのが残念だけど、
彼らしい場所に座ってた。
少し、部屋を明るくしすぎたかな。
他愛もない話をした。
飲むと恋愛話になるのはどこも同じ。
彼の言うには進化心理学で言うと、
浮気はは正当化されるんだって。
なんか、私もそういうの見たよ、前に。
同じようなことに興味持ってるのかもね。
風邪がつらかったからイマイチ楽しめなかったけど
3時半くらいまで飲んで、解散した。
彼にお願いしたら、帰り際に
モーニングコールしてくれるって言ったので
安心して終わってすぐ、寝てしまった。
彼も、もちろん来た。最初に来てくれたのが、彼。
隣に座れなかったのが残念だけど、
彼らしい場所に座ってた。
少し、部屋を明るくしすぎたかな。
他愛もない話をした。
飲むと恋愛話になるのはどこも同じ。
彼の言うには進化心理学で言うと、
浮気はは正当化されるんだって。
なんか、私もそういうの見たよ、前に。
同じようなことに興味持ってるのかもね。
風邪がつらかったからイマイチ楽しめなかったけど
3時半くらいまで飲んで、解散した。
彼にお願いしたら、帰り際に
モーニングコールしてくれるって言ったので
安心して終わってすぐ、寝てしまった。
”どうしても守らなきゃいけないものなんて、ないでしょ”
…え?
”何度も離婚届に判を押したよ”
夜中の彼の部屋、みんなのいる前で彼は言った。
耳を疑った。
賢いふたりの娘、彼の帰りを待ちわびる妻、
イベントがあるたびにホームパーティーを開く彼の家、
家族で旅行したり、遊びに行ったり…
私には想像もつかない、仲の良い家族、理想的な家庭。
何があなたにそんなことを言わせるの。
確かだと思ってた何かが崩れた気がした。
”俺を育てたのは、妻じゃなくて、その前に付き合った女性だよ。
18から20くらいの間に
俺も、今では女性が育っていくのに関与できればって思ってる。
自分が育てた女がよその男とくっついても、それはそれで
良かったと思えるよ”
彼が付き合った女の人には彼氏が別にいたらしいし、
そういう女の人に彼は振られたこともあるって。
彼の今の妻は、結婚前に婚約者がいたらしくて
親が口きいてくれなかったとか。
なんか、意外だ。彼、頑張ったんだな。
それなのに、どうして?
別れ際。
”泊まっていけといいたい気持ちはあるけど
そういうわけにもいかないでしょ”
何でそんなに無防備なの?
…え?
”何度も離婚届に判を押したよ”
夜中の彼の部屋、みんなのいる前で彼は言った。
耳を疑った。
賢いふたりの娘、彼の帰りを待ちわびる妻、
イベントがあるたびにホームパーティーを開く彼の家、
家族で旅行したり、遊びに行ったり…
私には想像もつかない、仲の良い家族、理想的な家庭。
何があなたにそんなことを言わせるの。
確かだと思ってた何かが崩れた気がした。
”俺を育てたのは、妻じゃなくて、その前に付き合った女性だよ。
18から20くらいの間に
俺も、今では女性が育っていくのに関与できればって思ってる。
自分が育てた女がよその男とくっついても、それはそれで
良かったと思えるよ”
彼が付き合った女の人には彼氏が別にいたらしいし、
そういう女の人に彼は振られたこともあるって。
彼の今の妻は、結婚前に婚約者がいたらしくて
親が口きいてくれなかったとか。
なんか、意外だ。彼、頑張ったんだな。
それなのに、どうして?
別れ際。
”泊まっていけといいたい気持ちはあるけど
そういうわけにもいかないでしょ”
何でそんなに無防備なの?
部屋の飲み会だった。
彼の周りには、他の人が気を利かせて
用意したらしい人事の女の子達。
みんな、お姉さん。
私は、彼からずっと離れて端の方に座った。
一緒になんて、いられないよ。
彼のことは忘れることにした。
文系の女の子と勝負して勝てるわけがない。
しばらく諦めて席にいる人と話してたんだけど、
ビュッフェ形式だったので、
料理をとりに行った間に私の席がなくなってた。
彼じゃない人に、彼のテーブルの方に呼ばれた。
思い切って、ふたつあいてた席のうち彼側の席に座った。
周りにいる人と、たわいのない話をした。
他の人は入れ替わるけど、彼は、動かない。
私も、動かない。
1次会の終わりまで、ほとんどずっと彼と一緒にいられた。
2次会の途中で、女の子達は帰宅。
その後まで残ってた私は帰り道、彼と歩いた。
他の人も途中まで彼といたんだけど、電車に乗るところでお別れ。
4人くらい後に残ったんだけど、彼と私はふたりで歩いてた。
人がいたら大勢でワイワイやるのが彼流だから、意外だった。
たいした話はしなかったけど、凄い近距離に彼がいた。
普通さ、普通の人はこんな距離まで近づかない…んじゃないの?
私が近づきすぎたのかもしれないけど、彼も距離を調整しない。
”ほんとに、誰か、いい人いないの?うちの部内に”
”んー、部長じゃないことは確か”
そう、ほんとは、あなたが一番いい。
でも、それはさすがに言えない。
重い恋愛感情だって思われたくないし、言わない方がいいでしょう。
結婚したいのかって聞かれたから、
恋愛、続かないし、1年で飽きちゃうって言ってしまった。
”妥協しちゃだめだよ。妥協は絶対許さない”
意外な答え。部外者の答えにあるまじき発言。
”君は、僕にとっては肌触りがいいよ”
”そんなことない。私は冷たいし、
恋人に言わせると倫理的に問題があるって”
自分もそう思う。何度言われたことか、何度相手を傷つけたか。
彼にとって私の肌触りがいいのは、
きっと、私の理想と彼自身が似ているところがあるから。
私が、彼のことを良く思っているから。
思わぬ彼の言葉が聞けて、少し舞い上がってた。
じっと、こっちを見て、そんな風に言われると思わなかったから。
彼の周りには、他の人が気を利かせて
用意したらしい人事の女の子達。
みんな、お姉さん。
私は、彼からずっと離れて端の方に座った。
一緒になんて、いられないよ。
彼のことは忘れることにした。
文系の女の子と勝負して勝てるわけがない。
しばらく諦めて席にいる人と話してたんだけど、
ビュッフェ形式だったので、
料理をとりに行った間に私の席がなくなってた。
彼じゃない人に、彼のテーブルの方に呼ばれた。
思い切って、ふたつあいてた席のうち彼側の席に座った。
周りにいる人と、たわいのない話をした。
他の人は入れ替わるけど、彼は、動かない。
私も、動かない。
1次会の終わりまで、ほとんどずっと彼と一緒にいられた。
2次会の途中で、女の子達は帰宅。
その後まで残ってた私は帰り道、彼と歩いた。
他の人も途中まで彼といたんだけど、電車に乗るところでお別れ。
4人くらい後に残ったんだけど、彼と私はふたりで歩いてた。
人がいたら大勢でワイワイやるのが彼流だから、意外だった。
たいした話はしなかったけど、凄い近距離に彼がいた。
普通さ、普通の人はこんな距離まで近づかない…んじゃないの?
私が近づきすぎたのかもしれないけど、彼も距離を調整しない。
”ほんとに、誰か、いい人いないの?うちの部内に”
”んー、部長じゃないことは確か”
そう、ほんとは、あなたが一番いい。
でも、それはさすがに言えない。
重い恋愛感情だって思われたくないし、言わない方がいいでしょう。
結婚したいのかって聞かれたから、
恋愛、続かないし、1年で飽きちゃうって言ってしまった。
”妥協しちゃだめだよ。妥協は絶対許さない”
意外な答え。部外者の答えにあるまじき発言。
”君は、僕にとっては肌触りがいいよ”
”そんなことない。私は冷たいし、
恋人に言わせると倫理的に問題があるって”
自分もそう思う。何度言われたことか、何度相手を傷つけたか。
彼にとって私の肌触りがいいのは、
きっと、私の理想と彼自身が似ているところがあるから。
私が、彼のことを良く思っているから。
思わぬ彼の言葉が聞けて、少し舞い上がってた。
じっと、こっちを見て、そんな風に言われると思わなかったから。