駅で

2004年7月15日 恋愛
彼が、外出をやめて会社にいてくれた。
私のためじゃないかもしれないけど、嬉しかった。
夜も、一緒に帰ろうって、そっと誘ってくれた。
少し、早めの時間に。

家にも電話してなかった。
だから、今日は少し時間があった。
最初、同じ課のヒトがついてきちゃったけど、
途中からはふたりだった。

最近よく座る駅のベンチで、少し長めに話をした。
”可愛いねって、言われない?”
ここぞとばかりにじっと彼のことを見てる私に向かって、
彼が言う。
彼は、前を向いてて時折こちらを見るだけ。
対する私は首が痛くなるまで彼のほうを向いたまま。
…完全に、私が負けてる。
”可愛いって、大抵のものは可愛いじゃない。
可愛げがないってのは言われるよ”
そう。可愛げないよ。
可愛いとか、美人だとか、みんな誰にでも言うじゃない。

”痩せてて、つり目で、声が低い女性が好きなんだ。
 それに、あなたは美人だよ”
彼が言う。
痩せてて、ってのがよくわからない。
痩せてる女って、抱きごこち悪いでしょ?
声だって、ボソボソ喋る私より高い声のほうが可愛いじゃない。
そもそも、美人ってのはウソだから。
写真に写る私は凄い野暮ったい。今だってノーメーク。
肌なんか酷いクマと吹き出物で自分で見ても見苦しい。

最近は敢えて吹き出物すら見えなくなるくらいの
至近距離まで彼に寄ることにしてる。
なんというか、近くで見すぎると人間って
バランスが分からなくなるみたい。
さらにそこで彼の目を見る。彼が、アラを見ないように。

何度か、沈黙が流れた。
飛び交う羽虫を彼が払いよける。
私の髪についた虫も、彼が取ってくれた。

”何か、ついてる”
彼が、私の唇に触る。
きっと、噛んでたガムがついてたんだろう。

彼の目が、微妙に目じゃないところを見てた。
何度か、何かいいたげな感じでこっちを向いて、また向き直って。
何本目かの電車が通り過ぎて、駅のホームが空になる。
不意に、彼の唇が私の唇に触れた。
軽いキス。

ここで、してもいいの?
1度しちゃったら止まらないよ、きっと。
顔を離して笑ってる彼に体を寄せたら
彼がまたキスしてくれた。
”人がきたよ”
おどけてみせる彼を軽くあしらって顔を寄せる。

こんな時間が、いつまで続くのかな。
彼と結婚して、彼を幸せにしてあげられるとは思わないけど、
彼と一緒にいたいと思う。

綺麗な目、疑うことを知らない心、私の知らない世界。
欲しくて、たまらないから。

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