朝。いつもどおり、彼にあいさつしない1日の始まり。
あぁ、元に戻っちゃったなぁ。
彼が、雑用で話し掛けてくれるけど、それってほとんどいつもどおり。
向こうから用件言うだけ。しかも週一だもんな、この雑用。
彼に今週どうするのってひとこと言うだけなのに
短いだけに余計意識しちゃって、緊張するからちょっと気が重い。
ごくたまに、彼がこっちむいてた気がするけど、
それもまぁ、確認したわけじゃないから
よそ向いてたのかもしれないし。
いつもどおり。何の変哲もなく。
隣の課の課長もしてる彼は相変わらず私にわかんないことを
さくさくさばいてて、距離もいつもどおり遠かった。
夕方。
先週、帰りに彼に借りたお金を返そうと思ってたら、
ちょうど彼がこっちに来た。
”ちょっと”
うん、なんだろう。
横に少しずれて、彼が言った。
”席、横に移ってもらえる?”
え?
”ここにはT君に来てもらうから”
彼は、私の斜め向かいにいた。間には仕切りがあるけど
仕事してる彼が少しだけ見える悪くない位置。
ここから、席替えっていったって
彼の周りにはプロジェクトの主要メンバーが固まってる。
私のプロジェクトのメンバーがいるあたりの空席は
残念ながら彼の位置からずっと離れてる。
先週、話したときに、彼が考えてた席割では
Tさんが私の横で、私は動かない予定だった。
私が動くとしたら、プロジェクトメンバーを固めるという意味では
彼から遠い席に移動ってことになったと思うし、
多分移動するならそっちだと私は思ってた。
でも、彼が指示したのは、横。つまり、彼の正面。
仕切りがなければ、彼と向かい合わせ。
こないだ新しく来た彼のディスプレイがジャマしてるけど。
考えてみれば、朝、前言ってたのと席割変えたいんだ、みたいな話を
業務係の人に言ってたのが聞こえた。
それって、こういうことだったんだ…
もしかして、これって喜んでいいですか?
傍においてくれるって考えていい?
仕事面では私をこっちに持ってきてもなんのメリットもないし、
どっちかというと私情のような気がするんだけど、そう思っていい?
戸惑いながら、さっそく席を移動し始めた私を置いて、
彼は会議に行ってしまった。
彼が戻ってきたとき、私は必死でディスプレイの配線をしてた。
ディスプレイがつかない。おかしい。
机の下に潜って、配線を確認。
ほのかに彼のフレグランスの匂いが漂ってた。
大変だった?って聞く彼に、PCがつかないよっていったら
わざわざ机の上に乗って、配線の確認を手伝ってくれた。
ホコリだらけの仕切り板に手をかけて、狭い隙間に手を入れて、
むつかしい姿勢で、顔を寄せて。
それって、嬉しいんだけど、凄く嬉しいんだけど、
それって、えーと、男のヒトにはしない…よね?
電源もついて、それなりに机の上を片付けたら、彼が帰る準備してた。
そのまま、外に出て雑巾洗って戻ってきたら
先に戻っていった人がドアを開けてた。
中からも人の出る気配。
両手が濡れてたので、小走りしながら部屋の入り口を見たら
ちょうど部屋を出る彼だった。
そのまま、ドア押さえて待っててくれる。
先に入った人が少し行ってしまってから、彼が言った。
”ひとつ、聞きたいんだけど”
”はい?”
彼が、ちらっと後ろを見た。誰もいない。
”席、移るの嫌だった?”
嫌なわけ、ないじゃない。でも、いいの?
私が思ってるのと同じ意図?違う?偶然??
びっくりして、言葉が出なかった。首を振る。
やっと出てきた答えは”ありがとう”
ありがとうございます、なんだけどね。普通は。言えなかった。
ヘンな会話だろうな、知らない人が聞いたら。
彼はにっこり笑って去っていった。
後ろを向いた割には大きな声で私に席のこと聞いた彼。
彼の一番近くにいたのは私の彼氏だった。
聞こえてなかったかな?
Tさんが横に来るのは、正直嫌なんだけど、正面が彼ならいいや。
明日から、彼のお向かい♪嘘みたい。
彼の手際のよさにちょっと驚いた。さすが。
後輩が、引越しする私を見て言った。
”空席だったし、Tさんがあそこでも良かったんじゃないですか?”
…鋭い。そのとおり。もともと横にずれなくても席あいてるのに
私が動く意味なんて本当になんにもない。
必死で、言い訳した。怪しいかったかな。
彼は答えを用意してたのかな。
彼が、今日はお掃除用のティッシュ貸してくれた。
明日、彼に返そうと思う。
こないだの帰りもだけど…うまいよなぁ。
あぁ、元に戻っちゃったなぁ。
彼が、雑用で話し掛けてくれるけど、それってほとんどいつもどおり。
向こうから用件言うだけ。しかも週一だもんな、この雑用。
彼に今週どうするのってひとこと言うだけなのに
短いだけに余計意識しちゃって、緊張するからちょっと気が重い。
ごくたまに、彼がこっちむいてた気がするけど、
それもまぁ、確認したわけじゃないから
よそ向いてたのかもしれないし。
いつもどおり。何の変哲もなく。
隣の課の課長もしてる彼は相変わらず私にわかんないことを
さくさくさばいてて、距離もいつもどおり遠かった。
夕方。
先週、帰りに彼に借りたお金を返そうと思ってたら、
ちょうど彼がこっちに来た。
”ちょっと”
うん、なんだろう。
横に少しずれて、彼が言った。
”席、横に移ってもらえる?”
え?
”ここにはT君に来てもらうから”
彼は、私の斜め向かいにいた。間には仕切りがあるけど
仕事してる彼が少しだけ見える悪くない位置。
ここから、席替えっていったって
彼の周りにはプロジェクトの主要メンバーが固まってる。
私のプロジェクトのメンバーがいるあたりの空席は
残念ながら彼の位置からずっと離れてる。
先週、話したときに、彼が考えてた席割では
Tさんが私の横で、私は動かない予定だった。
私が動くとしたら、プロジェクトメンバーを固めるという意味では
彼から遠い席に移動ってことになったと思うし、
多分移動するならそっちだと私は思ってた。
でも、彼が指示したのは、横。つまり、彼の正面。
仕切りがなければ、彼と向かい合わせ。
こないだ新しく来た彼のディスプレイがジャマしてるけど。
考えてみれば、朝、前言ってたのと席割変えたいんだ、みたいな話を
業務係の人に言ってたのが聞こえた。
それって、こういうことだったんだ…
もしかして、これって喜んでいいですか?
傍においてくれるって考えていい?
仕事面では私をこっちに持ってきてもなんのメリットもないし、
どっちかというと私情のような気がするんだけど、そう思っていい?
戸惑いながら、さっそく席を移動し始めた私を置いて、
彼は会議に行ってしまった。
彼が戻ってきたとき、私は必死でディスプレイの配線をしてた。
ディスプレイがつかない。おかしい。
机の下に潜って、配線を確認。
ほのかに彼のフレグランスの匂いが漂ってた。
大変だった?って聞く彼に、PCがつかないよっていったら
わざわざ机の上に乗って、配線の確認を手伝ってくれた。
ホコリだらけの仕切り板に手をかけて、狭い隙間に手を入れて、
むつかしい姿勢で、顔を寄せて。
それって、嬉しいんだけど、凄く嬉しいんだけど、
それって、えーと、男のヒトにはしない…よね?
電源もついて、それなりに机の上を片付けたら、彼が帰る準備してた。
そのまま、外に出て雑巾洗って戻ってきたら
先に戻っていった人がドアを開けてた。
中からも人の出る気配。
両手が濡れてたので、小走りしながら部屋の入り口を見たら
ちょうど部屋を出る彼だった。
そのまま、ドア押さえて待っててくれる。
先に入った人が少し行ってしまってから、彼が言った。
”ひとつ、聞きたいんだけど”
”はい?”
彼が、ちらっと後ろを見た。誰もいない。
”席、移るの嫌だった?”
嫌なわけ、ないじゃない。でも、いいの?
私が思ってるのと同じ意図?違う?偶然??
びっくりして、言葉が出なかった。首を振る。
やっと出てきた答えは”ありがとう”
ありがとうございます、なんだけどね。普通は。言えなかった。
ヘンな会話だろうな、知らない人が聞いたら。
彼はにっこり笑って去っていった。
後ろを向いた割には大きな声で私に席のこと聞いた彼。
彼の一番近くにいたのは私の彼氏だった。
聞こえてなかったかな?
Tさんが横に来るのは、正直嫌なんだけど、正面が彼ならいいや。
明日から、彼のお向かい♪嘘みたい。
彼の手際のよさにちょっと驚いた。さすが。
後輩が、引越しする私を見て言った。
”空席だったし、Tさんがあそこでも良かったんじゃないですか?”
…鋭い。そのとおり。もともと横にずれなくても席あいてるのに
私が動く意味なんて本当になんにもない。
必死で、言い訳した。怪しいかったかな。
彼は答えを用意してたのかな。
彼が、今日はお掃除用のティッシュ貸してくれた。
明日、彼に返そうと思う。
こないだの帰りもだけど…うまいよなぁ。
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