彼の車で都内をドライブした。
車で都内を移動することなんてなかったから
行き先は彼に任せた。
家のちかくから都心まで、いろんな街に寄りながら
お台場まで行って帰ってきた。

お洒落な小さなお店が軒を連ねる街。
何の変哲もない雑居ビル街の裏の遊び場。
有名ブランドの路面店が建ち並ぶ街。
ひとりじゃ行き辛いし、行こうとも思わなかった場所。

近所に住んでて、同じ会社で働いてるのに
生活してきた場所は全然違う。
憧れはあるけど、慣れない環境に少し腰が引けてしまう。

早く慣れて、楽になりたい。

誕生日。おめでとうのメールは日付が変わるとともに
もう3年も前に別れた元彼から。
2番のりでおめでとうをくれた彼は悔しがってて
朝イチで”直接おめでとうって言ったのは僕が最初だよね”なんて
言ってた。

負けず嫌い★

今日も結局彼と過ごした。彼氏には何も言われなかったし。

会社をふたりで早く出て、彼が見つけた都内のレストランへ。
彼が好きそうな南米風のレストランだった。

座ってしばらくすると、彼の携帯に電話。
気を使ってか、お店の外まで出て彼は電話に出てた。

彼、なかなか戻ってこなかった。
彼の親御さんになにかあったんじゃないかって、
少し心配だった。
だって、もしそうだったら、帰らざるを得ないじゃない。

後で聞いたら、そうじゃなかったんだけど
ムリしてないか、気になった。

私のほかにもお誕生日の人がいたらしくて、
フロアのどこかでバースデーソングが流れてた。
それを聞いた彼が、店員さんを呼んで
”彼女、今日誕生日だから”って言ってくれた。
あのものすごい店員さんの合唱がやってくるのは
少し怖かったんだけど…たまにはいいかな。

結構、酔いました。ふたりして。
帰りは道すがらキスしながら歩いて帰った。

帰宅すると、彼氏から”何も出来なくてごめん”って
メールが来てた。
去年ならがっかりするところだけど、
今年は少し彼氏が可哀想で何もいえなかった。
放っておいてありがたかったってのもあるし…

会社帰りの彼が川縁を散歩しようって言ったから
家の近くの駅で待ち合わせした。
私が来週試験だから、時間を取らないようにって
彼が私の家の近くまで遊びに来てくれている。

あんまり、嬉しくないんだけどね。
一緒にいられる時間、短くなっちゃうから。

河原に下りてみたら、
座れそうなところはまだ台風のときに散らかった
ゴミとか変色したススキでいっぱい。

”今日は失敗。お店に行こう”
近くで喫茶店を探したけど、ぜんぜんなし。
甘いものが食べたいって言う彼と一緒に
また同じ間違いしてる、なんて言いながら
昨日と同じく隣の駅まで手をつないで歩いた。

昨日、仕事が終わったら会いにくるねって約束してくれた彼から
”あなたの家の近くでどこか行こう”
…ってメールがきた。

さっそく、調べましたよ。うちの周りのレストラン＆バー。
近く、といっても、ほんとに家の周りは
彼氏もいるし、知ってる人もいる可能性があるしでダメ。
彼が指定したのは、ほんとにお店なんてあるのか怪しい一帯。

それでも調べてみたら、2−3件それらしいお店があった。
今日はお酒飲まずに長居しないっていう彼の言葉を聞いて、
そのなかの1つに行ってみることにした。

待ち合わせの駅を1つ変えてってお願いしたんだけど、
彼がメールに気がつかなくて結局
少し道がわかりにくい駅から出発することになった。
”ここからじゃ、どう行けばいいかわからないよ”
彼に場所を説明したら、彼は私の手を引いて歩き出した。

”あなたが風邪を引いていなければね…”
人気のない暗い道を歩きながら、彼がこっちを見る。
住宅地を抜けて、ついたのは隣の駅。
…歩いてるじゃないですか。結局。

ただ、わかる道に出ただけあって、ちゃんと目的地には着けた。
ついたレストランはかなり年期が入ってたけど
手頃な値段でコースもたくさんあったしそれなりに量もでてきた。
彼はお料理もおいしいよって言ってくれた。
サービスしてくれた方が感じの良い年配の人だった。
残念ながらその方に特にお礼を言ったわけではないんだけど
また機会があったら行ってみてもいいな。

自分でどこに行くか決めるのって、
結構気を使うから、彼が良かったよって言ってくれたのは
嬉しかった。
”この間のところも、ここも、よかったよ”
ほんとにそう思ってくれたら、嬉しい。
教えてくださったネットの向こうの皆さんにも感謝です。

今日は彼がドライブに行くって言ってたので、食事してすぐに別れた。
ひとりで行くんでしょ?私も行きたいな…。
あーあ、試験さえなければ。

彼も私も会社を休んだ。
彼は家の用事で、私は試験勉強と体調不良で。

夕方、彼が会いに来てくれた。
私の家の近くまで、奥さんを送ってきたらしい。
”会いに来た”
悪戯っぽく彼が言う。
えーと、つまりなんですか、
ついさっきまでこの助手席には奥さんがいらっしゃったわけね。

何を話すわけでもなく、試験がんばってね、とかそんな話をした。
あと、昨日の件について、早速手をうってくれたらしい。
咳が出そうで、迂闊に喋れない。
半年前、彼と飛行機の中で話したときのことを思い出す。

一昨日も休んだし、
明日は会社にいってもいいかなって思ってたんだけど、
彼が休みなさいって言ったのと、
彼は明日は席にはいないって言ってたのと、
それより何より明日、仕事終わったら会いに来てくれるっていうので
休むことに決定。

家に置いていたはずの風邪薬がなかったので、
会社に置いてあるのを明日彼に持ってきてもらうことにしました。

机の中、綺麗に片付けてたかなぁ…

風邪、治らなかった。
よりによって、鼻水が出る。
咳は咳で辛いんだけど、鼻水もかなりカッコ悪い。

”今日は、子供の学校の買い物に行くから、
　帰りはあなたの家のある駅まで一緒に帰るよ”
図書館いこうって、月曜日に約束したのに。
うん、とだけ言って黙った私に彼が言う。
”台風来るし、風邪ひいてるし、そのほうが安心だから”
風邪ひいてるから、家でゆっくり休めって事なんだろう・
うつしても困るし、そうすべきなのもわかる。
試験勉強だってしなきゃいけないし遊んでる場合じゃないってのも。
でも、それでもやっぱり面白くない。
せっかく早く帰れる日だから、一緒にいたかったのに。

1日それで結構拗ねてたのに加えて、
仕事もあんまりすすまないし、
帰りは帰りであっさり駅で別れちゃうし。
彼氏は今日は泊まりで出張。
彼は彼で家族と買い物。

会いたいって思ったって、会えないじゃない。
愛してるって言うんだったら、
なんで今日みたいな日にひとりでいなきゃならないの？
体調は良くないし、仕事はわからないことばかりだし、
早く帰って勉強するしかないことも憂鬱だった。

誰も助けてくれないんだったら、なんでいつも傍にいるよなんて言うの？
いつも想ってるよって言うんだったら証拠を見せてよ。
そう言いながらもあなたは先に寝ちゃうし、
今日みたいに平気で帰っちゃう。

大泣きしてるところに、一度家に帰った彼からメッセージが入った。
そんな遠くから言われても、納得できないよ。馬鹿！
彼がいるときだけ、辛くなるわけじゃない。
それなのに、依存してていいなんて言うのは間違ってる。

結局、ひとりでいたほうがいいんだよね。
依存したら、うまくいかない。それは、彼じゃなくても一緒。
彼氏と付き合いだした頃も、同じ理由で大泣きしたことがある。

病的に寂しいので、安定剤を買ってこようかと思った。もうだめだ。

夜。落ち着いたころに彼とメッセで話した。
ほとんど、内容は仕事の話。
私の先輩と、うまくいかないって話をしてたら
それは彼の責任だって彼に言われた。
2時くらいまで話して、彼が何とかするって話で落ち着いた。
テキストベースのコミュニケーションになって
理屈をこねたおかげで、寝るころにはすっきりしていた。

風邪ひいて、1日休んだ。外、雨だったし。
彼からも、彼氏からもメールはきたけど、どちらとも会わず。

型どおりに心配だとかゆっくり休んでなんて言われても、
あんまりココロに響かないです。
どちらかというと、マメに連絡してくれることのほうが嬉しい。

夕方まで寝てました。

”奥さんのどこが好きだったの？”
”どこだろうね。答えられないよ”
夜、ふと気になって聞いてみた。
20年も、あなたが彼女を想っていた理由は何？

”最初は外見で、あとはしっかりしてそうなところ、
彼女がしっかりしてたら、補完関係になるかなと。
あとは、彼女はその頃婚約者もいたし、
他の人からもいろいろ言い寄られてたし
勝ちたかったってのあるかなぁ。
彼女は彼女で計算があって、俺のこと選んだんだと思うけど”

結婚した当時は、彼の方が彼女に遊びにいくなって言ってたらしい。
嫉妬だよね、それ。今と、逆。
”長い間望んだのに、手に入ったとたん、空しくなった”
やっぱり、よくわからない。

結婚するとき、彼女の家に反対されたって話も聞いたけど、
彼の家族も彼の奥さんとの結婚に反対したらしい。
”家が違うから、うまくいかない”

彼の奥さんで、そう言われるんだったら
私はもっとダメだ。手が届くわけ、ないじゃない。

少し、彼を遠くに感じた。

いつもどおり彼とデートした。

仕事が終わらなくて、2時間も待たせた。
既にワインをあけてた彼に注がれるままに飲んでたら
いつになく酔った。

”今でも、さん付け？”
いつも苗字にさん付けで呼ぶ私に彼が言った。
彼は私を名前で呼ぶ。
”どうよべばいい？”
”名前で呼ぶのは、あなただけだ”
綺麗な響き。あなたの名前、好きだ。
”じゃあ、名前で呼んでいい？”

いつもダメだしをする彼を壁際に追い込んで、キスした。
駅のホームでも、キスした。
彼は抵抗しなかった。酔ってたんだろうなきっと。
ホームに居た人が、こっちを見てたみたいだけど
視力を矯正してない私にはよくわからなかった。

途中、奥さんから電話かかってきたけど
一度彼は黙って切ってしまった。
電車の中ではあったけど、
酔ってた私は普通に彼の横で喋ってたから
多分奥さんまで私の声は聞こえているだろう。

電話の向こうには、電車のアナウンスも同時に聞こえてた。
帰りの時間があわなくなるのが分かってて、
彼は私を送ってくれた。

帰ってすぐに、寝てしまってた。机に伏せて。
PCついてたけど、音なんて聞こえてなかった。
そのはずなのに。

メッセに彼が来て、5分で目が醒めたらしい。
病的に会いたい。

少しだけ話したけど、
奥さんが起きてるから早めに切り上げた。

彼が疲れてたらしく、早めに帰った。
帰り道、途中の駅で降りて喫茶店へ。
止めどもない話をして。

外は雨。
少し歩いたけど、傘のせいで
いつもみたいに近くには寄れなかった。
雨なのに、外を歩こうなんて、
彼がいなければ思いもしない。

早く帰ったから、メッセでしばらく話できるかなって思ってたけど
家族が起きてたのと、彼が疲れてたのとで
すぐに彼は寝てしまった。

少しだけ、寂しかった。
期待のしすぎだと思う。自分でも。
どこまで彼に頼っていいのかわからない。

明日は、彼のお父さんの検査だって言ってた。
予想はしてるかもしれないけど
彼には、辛い結果になると思う。
そうなったら、物理的に手間もかかるだろう。
きっと、そうなった瞬間に彼の傍にいて、
彼を助けてあげられるのは、私じゃない。

手を差し伸べる人がいないよりはいて欲しいと願う。
でも、他の人の手に掴まっていて欲しくない。

彼と映画見に行った。デートじゃない？コレ。
休日に一緒に遊びに行くのは、初めてだった。
昨日といい、今日といい、普通の恋人みたいだ。

朝、彼のメールで目がさめた。
既にそのとき、彼は家を出た後。
急いで着替えて、彼に会いに行ったけど、会えたのは1時間後。
しかも映画は朝の上映時間に少し間に合わなかったらしい。

ホームで落ち合ったあと、彼が違う街にDVD買いに行くって言ったから
ついていくことになった。

ここで買えばいいじゃない、なんて思ったんだけど黙ってた。
この辺りの感覚の違いは、仕方がない。
お店なんて探せばいくらでもありそうなものなのに。

経済感覚の違い。意義を感じるものの違い。
時間の使い方の違い。好みの違い。
彼と今の距離で、今の気持ちで付き合うのは楽しい。
でも、結婚して一緒に暮らすことは、多分できない。

私生活、見えないところで私はかなり我慢してると思う。
彼の半分以下しか収入なくて、同じようにはできない。
削るところがただ、人から見えてないだけ。
彼にそんな我慢を求めることは、できない。
彼も今から自分の生活を変えるのは、きっと大変だろう。
私だって、彼の生活を全部背負えるわけじゃない。
外から見えないところでも、外から見えないからこそ
家の中では手を抜いて欲しくない。
どちらかというまでもなく外向きな彼に
そんなこと求めるのは難しいと思う。

映画は、そこそこ。よく分からなかった。
彼は”そこそこ、嫌いじゃない”って言ってたけど、どうだか。
でも、彼と一緒に行けたから、今日のところは楽しかった。
映画館であんなにいちゃいちゃしたこと、なかったよ。
ずっと彼と手をつないで、腕を抱いてた。
映画がそんなに面白くなかったから、
肩にもたれかかってみたり、頬にキスしたり、唇を合わせてみたり。

要は違った意味で楽しんできました。

彼と終わった後話をして、
よく分からなかった映画の筋が少しだけ分かった気がした。
面白い、といえるとしたら、そんなことがあったのが面白かった。

彼と別れた後、彼氏が夕飯の誘いのメールを送ってきた。
彼が夕方会えたら会おうって言ってたから一度断ったけど、
話が流れたので彼氏の誘いに乗ることにした。
彼氏が家を決めたというのでその話を聞いた。
晩御飯は彼氏もち。
今日の彼との昼ご飯は私もち。

ほんと、ごめんなさい。彼氏には悪いと思ってる。
この状況が彼氏に知れたら何言われるかわかったもんじゃないな。
彼氏は頼りなげだけど、優しい。
いいヒトなんだろうけどな。もう少ししっかりしてくれたらなぁ。

彼氏とデートだった。土曜日デートって、久しぶりだ。
なんだかんだで、彼に会いに行ってしまうから。

お茶だけ飲んで別れる予定だったけど
彼は時計の修理に行きたいって言った。
断る理由もなくて、ついていく。

修理に少し時間がかかるからって言われたから
そのまま少し買い物をした。
彼は荷物持ってくれるって言ったり、
お茶おごってくれたり、以前より優しい。

気がついているんだろうか。私と彼のこと。
そうだとしたら、こんなに穏やかではありえないはずだけど…
まだ頼りないし、尊敬できるとはいえないけれど、
この人はこの人でいい人だ。

結婚するとしたら、彼氏のほうがいいのかもな。
経済感覚も合うし、浮気もしないし。
彼の方は好みの女がいたら
好きだと思うのは仕方ないなんて言ってるし。
それが彼個人じゃなくて、彼の周りもひっくるめたものだとしても
彼のことを好きな女の人もいないとは言えない。
落とす側より、守る側のほうが大変だろう。
今はいい。でも、結婚してやっていく自信はないんだ。
今の奥さんみたいに、彼のことなんでもしてあげられるほど
私は器用じゃないし、働いてるんだから時間だってない。
どうなるかなんて、わからないけれど。

そんなこと思いながらも、彼からメールがきたら
彼氏を先に帰して彼に会いに行ってしまう自分がいる。

”暇なとき部屋を探すの、手伝って”
彼氏が言った。
”暇じゃないよ”
”じゃあ、暇を作って付き合って”
そんなこと、あなたに言わせる私は悪いやつだ。
ごめんね。気を使ってもらってるのに寂しい思いをさせて、ごめん。
どうすればいい？最近少し心が痛む。
そんな思いをするのが嫌で、浮気は止めようって思ってたのに。

彼は、子供が問題起こしたらしくて
早く帰らないといけないって言ってた。
親の仲が良くないと子供にも影響する、なんて言ってたけど
そういうことなんだろうか。
彼の家の子供って、内情を彼から聞いてなければ
反抗なんてしないで素直に育ってるものとしか思えなかったのに。
それでも私と会ってしまう彼も彼だ。
嬉しいけど、私の周りは前にも増して無茶苦茶。
私と、今の状況の両方を知っている人がいたら感想を聞いてみたい。
呆れるだろうか。

”昨日言ったことだけどひとつだけ訂正”
記憶があるか、なんてメッセージを読んだ彼が憮然として言う。
”何を言ったかは覚えてるよ。でも、いっしょになろうってのは
今の時点では約束はできない。
もちろん、そうしたいと思ってるけれど”
いつもどおりよね。わかってるよ。
”無理しないで”
そう。あなたが別れても、私があなたを選ぶっていう約束もできない。
あなたも、私を選ぶときに無条件で、とは言わなかったよね。
条件があるって言った。私も同じよ。

ゆっくりできない、来てもらっても悪いから、なんていいながら
思ったより長い時間彼は付き合ってくれた。
”来てくれて、ありがとう”
彼が言った。これじゃどっちが惚れてるんだからわからない。

彼が奥さんには疑われてるって言う話を聞いた。
それはいつもらしいけど、具体的に相手を特定して疑われてるらしい。
私には関係ない人だけど、相手の人と彼が
くっつく心配を彼の奥さんがしているなら
離婚って言う話にはなり得ないんじゃなかろうか。
奥さんにしてみれば別れてしまったら彼の思うツボになるだけだし。

ばれてないのはいいけれど、複雑。
逆にばれたとして、彼の部下である私に奥さんが手出しするときは
破局が前提だろうな。
逆切れした私が彼を訴えたりしたら
奥さんの生活も壊れちゃうでしょうし。
それはそれで危ない。リスクマネジメントはまじめにやらなければ。

1日外出の彼から朝、電話があった。
”今日、予定は?”
会えるの?てっきり今日はあえないと思って予定を入れたのに。

8時半を過ぎてからなら、って言って、電話を切った。
仕事はたまってるけど、今日はどのみち予定が入ってるから
会社は出なきゃならない。
だったら彼とそのあと会っても、いいじゃない。

先に入れてた予定が遅延して、彼に会えたのは約束の時間より
20分以上遅れてからだった。
今日会った場所は彼の家に近い街。私が、来年から住む場所。

彼が目星をつけておいてくれたので、
ふたりで人目につかないレストランに入った。
彼は先に飲んできてお腹いっぱいだったらしいから、
私はご飯を食べて、ふたりで一緒にお酒飲んだ。
彼は今日はいつもよりさらに機嫌が良くて、
幸せそうな笑顔で相手してくれた。

ご飯を食べた後、すでに顔が赤くなってたらしいけど
さらにバーに飲みに行った。
ワイン飲んで、カクテル2杯飲んでって、
昔の私から考えるとかなり飲んでると思うんだけど
最近それくらいじゃ酔わなくなってきた。
慣れてきたのかな。

”歩いた日は、キスする。でも、今日は飲みに来たからキスしない”
そんな意地悪を言う彼に軽く拗ねてみたり。
カウンターで指を絡ませて遊んでるのを
バーテンのお兄さんに見られてる気がして少し恥ずかしかった。
目の前でいちゃいちゃしててごめん。

バーを出て、彼と隣の駅まで歩いた。
お店を出たところで、私がキスしようとしたら
彼は横を向いて”ダメっ”って言った。

あきらめて歩き出した彼についていく。
商店街を抜けて、線路沿いの道に出るあたりで
ようやく彼がキスしてくれた。
”愛してる。愛しい…俺のものにしたい。全部”
耳元で彼が囁くけど、
彼に先にそう言われると後出しで愛してるなんて言えなくて
ただ彼を抱く腕に力を込めた。
間を開けずに彼の唇が私の唇を塞ぐ。
あなたが望むなら、私はあなたのものになるのを望もう。

”時間はかかるけど、一緒になろう”
いつもと違う、彼の言葉。
期待しないで、って言って、
社会的責任があるから無理だって言うあなたも
そんなことを望む？
望んでいることを聞かせてくれるだけでいい。
一緒になるのは最善の選択でないから。

”冷静でいられない。あなたなしではいられない”
その言葉を慎重なあなたに貰うのは
私にとってひとつの目標だった。
彼が何に溺れてるのか、よくわからないけれど
でも、その言葉が欲しかった。

珍しく、一緒に帰りながら直帰だった。
なぜなら、彼の体調が良くなかったから。

会社を出てすぐに帰るよって家に電話したのが
少し、寂しかった。
結局、あなたがつらい時に私は一緒にはいられない。
してあげられることは、早くあなたを解放することだけ。

もしかして、あなたは私があなたを気遣うのを待っているのだろうか。
ある時間より遅くなったら、
別れるのはつらいけど早く帰ってもらったほうがいいんだろうか。

一緒にいられないってことが面白くなくて
短絡的な結論に達しかけて思う。

私は…疲れるかもしれないけど、それでもあなたといたい。
だから、彼がもし私を早く帰そうとするなら
一緒にいられないことを寂しいと思うだろう。

”秋に、ベルギー大使館のディナーに呼ばれてるんだ。
女性同伴でよければ一緒に行こう”
帰り道、彼がそう言ってくれた。
実現するといいな。

キスした。
彼が私の唇にキスをする合間に、
唇にも、頬にも、首筋にも、耳にも、髪にもキスした。
1週間も、いなかったんだもん。
抱きしめたら、止まらない。
目を閉じて座っているあなたが、
たまに漏らす溜息が欲しくて。

”くすぐったいよ”
”くすぐってるだもん”
”感じちゃうかもしれない”
どうぞご自由に。耳も、首筋も、胸も、彼は弱そう。
苛め甲斐がある。
首のあたりから背中に抜けるって言ってたから、
背中も弱いんじゃないかな。
”どうしたら、もっと気持ちよくなる?”
あなたが本当に弱いのはどこ？

”普通、逆じゃない?”
一息ついて、彼が言う。
そういうことしてくれる人と
いままでつきあったことないから、私がするの。
私がしたら、彼らもしてくれるけど。
”じゃあ、どれだけ感じるか、知らないんだ”
…されるのは慣れなくて苦手。
自分の身体を曝け出すのが、怖い。
私の髪をかきあげて彼の舌がそっと耳を撫でていったけど、
恥ずかしくて、感じるどころじゃなかった。
そもそも、私は彼ほど弱点が多い体質じゃない。

私が苛め役ってのは
非常にいつもどおりで良くないパターンだ。
ここで彼に手を出したら
私が女の子らしく恥らえる日は一生こない。
彼の手足を縛って服を脱がせて
キスするようになったらどうしよう。私。
彼主体の私と彼の関係が
彼女キャラを誇る彼氏と私の関係のようになってしまう。
NGでしょそれは。

彼と一緒に、帰った。
帰国してから初めて、ゆっくり話した。
騒音のうるさい駅のベンチで、だったけれど。

”向こうにいる間に考えたんだけど”
彼が言った。
”やっぱり、俺はいまのままでいたいと思う”

その言葉、傷ついた。
今のままって、彼にとってはどういう意味なんだろう。
私には”このまま、二重生活を続けよう”って聞こえた。

あなたがそのつもりなら、あなたのことは諦める。
今の彼氏、結婚するにはいい相手だし、
結婚相手として彼氏以上の人はきっと見つからないよ。
だから、私はきっと彼氏と結婚する。
他の人を探す必要なんてない。

”でも、俺が離婚して一緒に生活しようって言ったら、するでしょ？”
そうしたら考えるけど、そんなことありえないでしょ。
”確率は低くはないよ。期待してもらっても困るけど”
でも、あなたにも選ぶ権利はあるし、結婚と離婚は別でしょ。
”もちろん。でも、今そうなったら、一緒に生活することを断る理由なんて、ないな”

あなたにとって、いまのままっていうのは、
結婚を継続するって言う意思ではないということ？

期待して待っていて、結局その気がありませんでしたってのは
不倫の典型的パターンだよね。
そうじゃないって、彼は言う。
そういうふうには、見えない。
でもきっと、現実はそんなにうまくいかない。

彼がお土産をくれた。

”いつも、あなたのことを想っています”って
英語で書かれたプレートと、絵葉書。

多分、言いたかったのはそういうことなんだろうな。
少しだけ、彼の気持ちがわかった気がした。

古くなった下着を捨てて、新しいのを買いに行った。

下着を誰かに見せる機会って、
まったくなくなっちゃったから、張り合いがない。
昔から力が入ってたかというとそういうわけでもなかったけれど。
ただ、ほつれを見つけてしまったのには危機感を感じた。

サイズがサイズだから、あまり置いてなくて
適当なのを見繕って2枚同じのを買ってきた。
いままで買ったことのない色。
濃い色だけど、秋冬だからいいかな。

身体も、堂々と人前に晒せるようになったら
もっと楽しいだろうな。

彼が帰国した。私は彼氏とデートだった。

野外ライブにいたんだけど、ライブ中かつ
デート中に電話がかかってくることになるから
彼の飛行機がつく時間が近づくと少し落ち着かなかった。
彼氏からも、ステージからも離れたところで時間を潰してた。
彼氏には体調がよくないなんて苦しい言い訳をして。

待てど暮らせど電話は鳴らず、40分くらい待っただろうか。
諦めかけたところで電話が鳴った。
”もしもし…帰りました”
彼の声。おかえり。お疲れ様。
”騒がしいね、どこにいるの？”
コンサート会場。
うるさいのと、デート中であることがわかったせいか
彼はすぐ電話を切った。

少し、寂しかった。言わなきゃ良かったな。

彼氏とは夜までライブにいて、一緒にご飯食べて帰った。
彼からはその後連絡もなくて、
疲れて、そのまま寝てしまった。

あした1日が長い。

彼は今日から海外。
朝は久しぶりに寝坊した。
今週会えるのは今朝が最後だから、起きようと思ってたのに、だ。
彼からの電話で目がさめた。

早く起きたとしても、重い荷物を持った彼を
奥さんが彼を会社まで送ってしまったらしいから
どっちにしても会えなかったんだけど。

彼は昼過ぎに、会社を出て行った。
お昼休み、彼と一緒に売店に買い物に行った。
気をつけていって来てね、なんて話しながら。
たった1週間なのに。

彼からは夕方、飛行機に乗る前にも電話があった。
連絡あると思ってなかったんだけど、
ふと携帯を見たら他の人と話してる間に
彼から何度か着信があった。

留守電が入ってたけど、メッセージを聞く時間ももどかしくて、
彼に電話した。
”今から飛行機乗ります”
急いでて、焦ってて、何も気の利いたこと言えなかったけど
声が聞けて嬉しかった。

留守電に入ってたメッセージ。
”出発前に声を聞きたかったけど、残念でした”
思わず、保存してしまった。
1週間、あなたのよく通る声が聞けないから。